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世界の旅日記や 文化、歴史のぷち・エッセイを書いています。他にも海外、国内のお気に入りのドラマのあらすじ&感想を勝手気ままに綴っています。

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ボードレールとシャンソン

ボードレールとシャンソン

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ボードレール


先日フランス・アマゾンに注文していたCDが届いた。
その一枚は、ボードレールの12編の詩にレオ・フェレが作曲して歌ったもの。
詩集出版より100年を経て、作曲されてレコードとなり、その50年後にCD盤に復刻されたという しろものである。

レオ・フェレは、古典シャンソン界における文学派の巨匠で、よくレコード・ジャケットには白髪の仙人のような風貌で登場する。ジョルジュ・ブラッサンスと並んで一時代を築いた。既に故人である。

オリジナル・シングル盤のリリースは、1957年と古く、1967年にLPアルバムとなっている。これは父の宝物で、学生時代に好んで聴いていたレコードの一枚で、現在は遺品になってしまった。時々思い出すことはあったが、レコードプレイヤーも機能しなくなってしばらく聴けないままだった。その後CD化されず、長らく幻の名盤となっていたが、2008年に復刻されたことを知り、早速、取り寄せたという次第。



悪の華等ボードレールの12編の詩に作曲  フェレのジャケット
フェレのジャケット



ボードレール略歴
1857年、ボードレールがパリで出版した詩集「悪の華 Les fleurs du mal」
その詩篇の一部は風俗紊乱の恐れありとして、当局から削除命令を受けて罰金刑を喰らったという、いわくつきの作品。
フランス文学に関心をもつ者にとっては避けて通れないのが、19世紀の象徴詩であるが、その官能的で魂を揺さぶるような魔力の源泉は、いったいどこからくるのだろうか。
いわゆる「破滅型」とか「呪われた詩人たち」と呼ばれる系譜の中では、後の詩人、ランボーやヴェルレーヌと共に、ボードレールはその筆頭格に挙げられるだろう。
実父は、老人と言えるほど母とは歳が大きく離れていた。幼少期に父と死別、母は再婚。
養父の庇護の下に反抗的な少年期を送るが、勉学は優秀であった。実父が残した莫大な財産を相続するも、数年間で遊蕩に使い尽くし、24歳にして禁治産者となる。青年時代は急進的な政治活動に身を投じ、1848年の2月革命に希望を託すが、その後、ナポレオン3世による帝政復活で挫折。フランス共和制と民主化の夢は再び遠ざかる。代表作の詩の殆どは30歳になる前に書かれた。37歳で詩集を出版。その後、エドガー・アラン・ポーの詩や小説の翻訳、美術批評を手がける。40歳頃から病苦と貧窮の生活が続き、1867年、47歳で死去。
没後「巴里の憂鬱」出版。



ボードレールが青春時代を過ごしたサン・ルイ島の館
ボードレールが青春時代を過ごしたサン・ルイ島の館



ボードレールやランボーを愛読している政治家や企業人といったイメージは浮かびにくい。
思春期から青年期にかけて、フランス詩に惑溺したという経験があっても、社会人となり、ビジネスの枠に組み込まれていくにつれて、次第に離れてしまうのが常。
サラリーマンや公務員として、責任と義務を任うすべき日々を歩むためには、こうした詩の世界は反社会的で、公共の良俗秩序にも相反する。仮に両立させようとしても、内面的な分裂は必定かもしれない。

ボードレールの写真を見ると、「もう、完全に目がイっちゃってるし~。このおじさんコワひ~」というリアクションもありがち。何といっても天才なので仕方がない。天才はお愛想笑いなどはしない。遠くから畏敬するのは良しとしても、お友達になるのは、正直引くかな~。しかし、何といっても芸術家なので、知識も話題も豊富そう。「ブロ友にはなってみたいけど、リアルでは勘弁・・」というカンジだろうか。
実際会ってみたら、意外とお笑い系のおいちゃんだったりしたら面白い(爆)
一般に流布されている肖像は、写真機が発明されたばかりの”おフォト”という意味でも貴重なもので、当時としてもダンディな有名人だったという証しである。



ボードレールによる書き込みがなされた1857年版『悪の華』扉
200px-Fleurs_du_mal.jpg

150年を経て・・・
ムンクの絵がぴったりとはまる悪の華
ムンクの絵がぴったりとはまる『悪の華』




百聞は一見に如かず、一度ボードレールの詩をシャンソンで彩ったメロディーと聞いてみるべし。探すとどこかからちゃんと出てくるなんて、いい時代になったものだ。ああ、このメロディーだ・・・涙が出そう。

Baudelaire:ボードレール
Le serpent qui danse「 踊る蛇 」


Que j'aime voir,chère indolente,
De ton corps si beau,
Comme une étoffe vacillante,
Miroiter la peau!

Sur ta chevelure profonde
Aux âcres parfums,
Mer odorante et vagabonde
Aux flots bleus et bruns,

Comme un navire qui s'éveille
Au vent du matin,
Mon âme rêveuse appareille
Pour un ciel lointain.

Tes yeux,où rien ne se révèle
De doux ni d'amer,
Sont deux bijoux froids où se mêle
L'or avec le fer.

À te voir marcher en cadence,
Belle d'abandon,
On dirait un serpent qui danse
Au bout d'un bâton.

Sous le fardeau de ta paresse
Ta tête d'enfant
Se balance avec la mollesse
D'un jeune éléphant,

Et ton corps se penche et s'allonge
Comme un fin vaisseau
Qui roule bord sur bord et plonge
Ses vergues dans l'eau.

Comme un flot grossi par la fonte
Des glaciers grondants,
Quand l'eau de ta bouche remonte
Au bord de tes dents,

Je crois boire un vin de Bohême,
Amer et vainqueur,
Un ciel liquide qui parsème
D'étoiles mon coeur!


なんて楽しいんだ、物憂げな恋人よ
きみのその美しい肉体を見るのは
まるで揺れ動く布のように
肌がきらめいている姿を

きみの豊かな髪の上には
きつい香水の香りとともに
ゆらめく香り高い海が広がる
青と灰色の波を立たせてる

目覚めた小船のように
朝の風を受けて
ぼくの心も船出するんだ
遠い空を目指して

君の瞳は、何も表さない
つらさも優しさも何も
2つの冷たい宝石だ
金と鉄とで飾られた

君の歩く様子を眺める
美しくも気ままに歩く姿を
それはまるで踊る蛇のようだ
棒きれの先のところで踊ってる蛇

けだるさが重くのしかかっている
きみの子供のような頭は
ゆらゆらとバランスしながら揺れる
まるで子ゾウの頭みたいに

身を横にして寝そべるときは
きみは華麗な帆船のように見える
右に左に揺れながら
帆桁を水に浸している

溶けた鉄によって洪水のようにあふれ出す
轟く氷河からの水は
きみの口からあふれ出す唾液
それが歯の隙間からにじみ出てくるとき

ボヘミアのワインを味わうような気持ち
苦くも心打ちのめされるような
天上の飲み物、
ぼくの心に星を振りまく


Léo Ferré - Le serpent qui danse 「 踊る蛇 」レオ・フェレ( 1916 - 1993 )
http://www.youtube.com/watch?v=ukhpusMT5dY



シンギング・シャンソン・ライターとしてのフェレの代表作品といったらやはりこれかな

Le Pont Mirabeau Leo Ferre  ミラボー橋 (アポリネールの詩による)




文学史上、名作とされる作品の運命のスパンは長い。そして、詩人は一冊の詩集を以て不朽の存在となる。
当時、文学界の大御所として名を馳せ、多作で知られたモーパッサン、ゾラ、フローベール、バルザックといった大家たちの小説は、現代の日本ではあまり読まれていない気がする。彼らが文学という形で提示して告発した社会矛盾は、その後の時代の流れと共に徐々に意義を失っていった。自由恋愛が可能な世の中となり、民主化が進み、無宗教が一般化した現代において、階級、不倫、神と人間の関係などについての問題提起をする意味は薄い。それらは最終的に解決されていないにしても、現代文学の素材テーマとしては、すでに時代遅れとなってしまった感がある。

象徴派詩人は「デカダンス 退廃」という言葉で片付けられがちであるが、しかし、現実と幻想の狭間を行き来する夢追い人たちにとっては、日常現実の閉塞状況を破る、一種の清涼剤の役割を果たしているのかもしれない。
ボードレールとレオ・フェレの共作ともいえる「悪の華」・・・この作品もまた、すべてを老い朽ちさせてゆく時の流れを以てしても、色褪せることのない言葉と音楽の一つであると思われてならない。



美雨


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